寛容な道

-BELLEVILLE-

よんどころの無い用をめったに行かない所でして、もしかしたらもう二度と来ないかもしれないと思い、直ぐに地下鉄に乗らないで少し歩いてあっちの方に行ってみました。
やっぱり金輪際来ないかもしれないと思った位だから、面白くもへったくれもない景色だったんで、ではもう少しと歩き続けていたら少しずつ怪しい様子になってきました。
おやあっちの方になんかありそう、なんて歩き続けていると,とっぴな所に出くわすのがパリの面白いところ。
その日は予想もしなかったベルヴィルに到着しました。
地図で見ると右上の方、パリ20区のチャイナタウンです。
もう一つ大きなチャイナタウンがパリ13区にあるんですが、私はこっちに行きます。綺麗だから。
ベルヴィルとは《美しい街》って名前なんですが、何しろ汚い、不潔、ばばっちい。
ですからここには私としては100年ぶりぐらいに来た訳です。
この地区は昔から移民が住んでいた地域です。
第1次世界大戦の頃ポーランド人、ユダヤ人の移民が住んでいました。
第2次世界大戦時はユダヤ人の大々的な一斉検挙が行われた所で有名な地区です。
1960年代になって北アフリカからの移民が住みつき、1980年代から今のようにアジア人が大挙して住み始めました。
もうパリに居るとは思えない様相です。
なるべく物や人や壁なんかに触らないよう肩をすくめて、小さくなって歩いてさっさと地下鉄乗って家に帰ろうとしていたんですが、道の反対側に、色が氾濫している面白そうななんかが見えました。
もちろん行ってみました。
あらまー、細いでこぼこ道の全部の壁が落書きで埋まっていました。道の植木鉢も芸術的。
なんなのこの楽しい道。
あるお店も全部変。
そんなおかしい訳でもないのに、なぜかゲラゲラ笑いながらその細道を行ったり来たりしていたあたしが,その時の一番変な物だったかな、と後でこの道の事をネットで調べながら暗い気持ちになって反省しました。
調べによりますと、道沿いの昔からの住人や店主、ホテルの支配人など皆が一致団結して自分家の壁に落書きしてよいという、なんとも芸術的センスのある寛容な心でストリートアートを受け入れたそうです。
噂が噂を呼び皆スプレー持って描きに来ます。
誰が描いてもいいんです。人
の絵の上にどんどん描いていくので絵がいつも変わって面白い。
Rue Dénoyez 75020 Paris