ヨーロッパでは、何にも無い地味な街でも取りあえず教会は街の見るべき物として存在します。なのでヨーロッパでの生活が長いと相当数の教会を見ることになります。私は教会大好きなので近くを通れば必ず中に入ります。パリの街中の教会はノートルダム寺院やサン ジェルマン デ プレ教会、サクレクール寺院などの観光スポットの教会以外は殆ど人がいません。静かで薄ら暗い教会の中に少し座っているだけでいいのです。よっぽど立派な教会にひょっこり出くわすと、日本からのお客様にご案内したいなと熱心な商売心が動きます。
多分教会の中にいると心を開いた様子でいるんだか、神父さんに話しかけられ、言葉を交わすことがあります。その中でも良くおしゃべりするのが、ノートルダム寺院の神父さん。彼の経歴が面白くて、東京大学で20世紀のフランス文学を教えていたんですって!へっ、宗教学とかラテン語とかでなく、フランス文学、それも20世紀の?彼の見かけや職業と全くかけ離れています。”またなんだって東大で?”と聞くと、”僕は教会の人間だからソルボンヌで教えることができないんだよ”と痛憤いうより悲しげでした。
フランスはフランス革命以来、宗教と政治、教育は切り離されています。ですので公立の学校は宗教色を出してはいけません。市役所などにも一切十字架などありませんし、クリスマスの伝統的な飾りのクレッシュもありません。という訳で神父さんが公立の学校で教鞭を取ることはできないのです。
彼とはとても楽しい会話が続くのですが、難はそれが途切れることなく永遠のごとく続くのです。お客様と一緒の時は、彼に会いませんようにと神様に祈りながらご案内します。
奇跡のメダル教会のシスターとも仲良しです。クリスマスには、あなたの為に祈りましたよ、と書いたカードを送ってくださいます。ありがたや、ありがたや。
教会にぼんやり座っているだけでなく、ちゃんとお勉強にも行きます。多くの教会が定期的にガイドツアーをオーガナイズしています。参加者は基本爺さん婆さんです。毎回感心するのですが、彼らの物知り具合は素晴らしいです。聖書の出来事やフランスの歴史、画家や彫刻家、建築家などの事をまぁよく知っています。教会のそこら中に書いてあるラテン語まで読んでくれちゃったりします。この人がガイドすればいいのにと思うような爺さんもいて、そんな人達といるとこちらまでほんのちょびっとだけ教養ってものにあやかれる気がします。
観光中でも通りかかった教会に足を休める為ででも入ってみてください。練習しているパイプオルガンを聞けたり、嬉しい発見があるかもしれません。