悪夢から1年

未だコートやブーツやらで出かけるパリの天気なので気がつきませんでしたが、もうバカロレアの季節になりました。あーバック(バカロレア=高校終了全国試験)!その名前を聞いただけで去年の悪夢が蘇ります。頭を禿げ上がらせて心配のどつぼに嵌まり込んでいた母をよそ目に、呑気坊主を決め込んでいた息子は、蓋を開けてみれば疑わしいほどのまあまあの成績で通過していました。学業はこれでお終いと思い込んでいて、次の学校の事はノープランだった母を持った息子は、自分でせっせと見繕った学校に入っていきました。
他所の子供に会えば、『どーよ学校楽しい?』というのが決まり挨拶みたいなもんで、うちで、はよからアペリチフなどを楽しんでいた私の友達も、帰ってきた息子にオートマチックモンに聞いていました。今までは、肩をすくめるか、別に、という返事しかなかったのに、『ハイ、とても楽しいです!』と機嫌よく答えるではありませんか。友達と私は怪奇現象にでも遭遇したように顔を見合わせ、あらまーあらまーとあたふたしてしまいました。
学年末で先日通知表が送られてきました。条件反射で、ぐわ~ぅっと胃を掴まれた様な気分になりながら恐る恐る開封してみると、エクセラン(素晴らしい)という文字が先ず入ってきました。ハア?今までは、できの悪い生徒への先生の常套句で『あなたなら出来る!今一つの努力を!』的なメッセージばかりだったのが。。。クラスで1番の科目もいくつかあって、宛名を何回も見直しました。そういえば、中学生の時だったか、物理の先生に、『彼は物理学者になるべく人です。』と言われて、あの~私はXXXの母ですが、と誰の事を言っているのか確認しました。イタリア語の先生は、彼はイタリア人の血が入ってるんじゃないかしら、なんて言て、冗談にも程がある、この先生おかしいわ、と首を振り振り家に帰った事があったなと思い出し、要は好きな事をやらしておけば、上手くいく子なんだなと安心したので、自慢げに回りに言いふらすと、全員が、『あ~た、よっぽどの馬鹿学校に入れたんじゃないの』と心から心配顔になっていました。
そうか、そういう方向に心配しなければいけなかったんだ。