アメリカ人の手紙、怒るフランス人

大聖堂で有名なアミアンという街があります。そこのグッドイヤーグループのタイヤ工場が経営に行き詰まり、誰か買ってくれる人を探していました。興味を示したのがアメリカのティタンタイヤ会社。そこの最高経営責任者がどれどれどんなことになっているのかとアミアンまで見に行ってみてギョッとしてフランスの担当大臣にお手紙を書きました。
『フランスの労働者は休憩とランチで1時間、おしゃべりで3時間、残りの3時間が労働時間。それでもって高給取り。どーゆーこと!?』
労働組合の答え『それがフランス式さ。』かちんかちんに強いフランスの労働組合です。フランス革命をした心意気が根っこに残っています。労働法規によりフランスで従業員を解雇するのは会社側にとって恐ろしく時間とお金がかかります。又、この工場のように閉鎖に向けて生産量を減らしていって1日2時間しか働かなくても全ての従業員に全額フルの給料を支払わなければなりません。『我々タィタンがそんな条件を全て飲んで、交渉に臨むほどアホと思ってんかいフランスは』『ミシュランタイヤだってそんな組合の言いなりになってたら、潰れる道まっしぐらだ』とか悪口さんざんのお手紙でした。
プライドを傷つけられたフランス。『馬鹿にしてからに絶対許せん!』とか『手紙に書いてある 機能障害、異常、矯正、という言葉に痛く傷ついた』とか、『フランスとはこんなもんだと思われたら心外だ、フランスはアメリカに次ぐ生産高が有り、ドイツより高いんだぞ』とかんかんです。アメリカの田舎ッペが伝統あるフランスに何をぬかすか!と大声で言いたいところでしょう。
しかし、アメリカ人が言っているのももっともです。
このアミアンのタイヤ工場、実は南北に分かれています。南はダンロップ、北はグッドイヤーで同じグッドイヤーグループになりました。しかし組合は2つあります。いつぞや経営が危うくなった時、会社側が労働時間48時間を提案をしました。南は解雇の可能性があるより良いと受け入れました。生産量が上がった南に会社側も投資しました。北は断固拒否、48時間も働いてられっかと。すると会社側も益々不振になる北のグッドイヤー側のリストラをやらざるえなくなりました。今回売りに出されているのも北側です。
事あるごとにデモやストライキをするのも組合のオーガナイズです。それがどんだけ会社に損害をもたらしているか。
フランスには労働裁判所という機関があり、労働者が何か問題があったら駆け込める所で、労働者の味方になってくれます。こんな所は他所の国には無いそうです。それもフランスでは11世紀からあるんですって。
予想を裏切り80%のフランス人は朝ご機嫌で会社へ向かうそうです。仕事中一番の楽しみはコーヒーブレイクとランチ。公共の建物の中では禁煙なので、ひっきりなしにタバコを吸いに外へ出て行きます。
やっぱり一般フランス人は1日3時間しか働いていないのでしょうか。