パリのプチパレ、若冲展

昨日、バスで帰ろうとプチパレの前を通ったら誰も人が居なくて、もしや若冲を独り占めできるのかしらと、ふらりと階段を登って行きました。チケット売り場には、行列用に七曲りにロープが張ってあるところを見ると、やはり若冲は話題沸騰になったようです。
初日に見た私は、フランス人の友達に会えば、”JAKUCHU 見た?”と話題にしていました。皆、”話は聞いたけど。。。。”と乗り気薄し。”見てみ、東京やワシントンじゃ大行列で、入場するのに最大の忍耐と体力を要したモナリザ級の展覧会だったんだから” と言うと、ぐっと乗り出してきて”そうなの?” そして皆 ”今、見てきた、マニフィック!” とプチパレを出たその足で、興奮したメッセージを送ってきます。
東大、多摩美の名誉教授である、辻惟雄先生の講演会でのお話がもう爆笑もんでした。先ず出で立ちからして、もう私の笑いのツボに嵌りこんで大変でした。
日本語、フランス語の同時通訳のヘッドフォンが用意されています。辻先生は一度頭に付けたそのヘッドフォンを自分が話す時も放さず、そうすれば口から日本語、耳からフランス語という難儀な状況に陥ります。さすがに近くの方に、先生お取りになってください、と言われても、そんな物がわが頭に乗っかっていることも気が付かなかったというお顔をされていました。
「老松白鳳図」の真っ白なフェニックスの羽に描かれている真っ赤なハート柄の事がとっても気になるようで、”このハートが何処から来たのかを考えます事に、多分トランプの、あや、今トランプと言えばあのアメリカの方と直ぐ思われてしまいますが、そうではなく英語で言えば、「ぷれいんぐ かーど」の事です。そこから来てるんじゃないかなぁ、とも思うのですが、はてその時代、日本に「ぷれいんぐ かーど」なるものが果たして輸入されていたのかも疑問なのですが。。。” 
「貝甲図」にお化けがいるとか、とても辻先生の楽しい会話術を文章にすることができないのがいかにも残念です。
周りはフランス人ばかりだったので皆同時通訳を聞いています。いくら同時と言っても、タイムラグはあるわけで、その中で私一人がゲラゲラ笑いの先頭に立つのですが、辻先生の話すリズムや言葉選びは日本語で聞いてこそ爆笑もんなので、続くフランス人の笑いはハハハ程度で、身を捩って笑っている私を見て笑っているフランス人がいたほどです。横目で一足早い私の反応を見て、おー可笑しなこと言ってるんだな、と笑う用意をしている隣人もいました。
次の方の順番になり、一旦下がった先生は、その方が終わるや、今度は顎の下にヘッドフォンをぶら下げて再び登場。打ち合わせと違うので、周りはあたふた。
”えー、先ほどの「ぷれいんぐ かーど」ですが、現代見られるハートやスペードやダイヤやクローヴァーという図柄にしたのはフランスでして、白鳳のこの赤いハートは要は”あむーる”(ここで、いひゃひゃひゃ~ぁと心から嬉し気に笑われる先生)と私は思っております。”
もう、涙が止まりません。
こんなお父さんとか旦那さんが家に居たら素敵だろうな。
空いていると思って中に入ってみると、初日に比べたら随分多くの人で、熱心にメモを取っている若者が多く目に付きました。名前だけ聞いて、ジャック チュという中国人かと思ったというタワケもいましたが、展覧会が終わる頃にはパリ中の人に知れ渡る名前でしょう。