私が子供の頃は何もしない空白のような時間を子供は一杯持っていたもんです。
テレヴィを見ているとうちのお母さんは、この子はロバかしら、とさも軽蔑したような顔で人の事を見るのでおちおちテレヴィの前に座っている事もできませんでした。
持て余している時間の中で、吸い込まれるように落っこちて行くのが、『あたしは誰?』の謎の中。
鏡で己の顔を見ながら、『これはあたしでないでしょ、んならこの顔の人は誰?』
『こー考えているあたしは何処?』
目が寄り目になるほど集中してこの途方もないどつぼにはまり込んでいる時間が結構ありました。
そんな暇こいている時間がなくなってかなりの時間が経った最近、あれは要するに、遺伝子が話していたんじゃないかしら?と思いつきました。
どつぼにはまっていた事すら忘れていたのに。何故突如思い出し、思いついたかと言いますと。
例のイデ ジャポンでひがな過ごしていた時です。
お客さんは圧倒的に日本に関心がある人達です。
日本語が達者なフランス人、日本へ旅行に行ってすっかりはまってしまったフランス人、日仏ハーフの人など。
ですので下手に日本語でアホな事をしゃべっていられませんでした。
そんな中、3人の高校生の女の子が来ました。
一人はタヒチとか海外県の子かな、もう一人はフランス人、もう一人はレバノン辺りの子かな?同じクラスの仲良し組だなと見当をつけもちろんフランス語で話していたら、『写真撮っていいですか、』と日本語できたもんだ。
『あらー日本語勉強しているの?』
『いいえ、私達3人とも日本人とのハーフです。』
すごいヴァラエティーに富んでいます。
確かにハーフの子は出方が色々で面白いんですが、この3人は正にそのフランス人と日本人のハーフの一覧見本のようでした。
親から何を受け継ぐかが大きな鍵なんですね。
面白い事に地理的にも西と東の間の中東的になる子もたくさんいて、彼らは日本人の血を1滴たりとも感じません。
逆にフランス人の血を全然受け継いでいないような子もいます。
共通して言える事は、赤ちゃん - 子供 - 大人の間にかなり容貌が変化します。
日本人の血が入っているのに、赤ちゃんの時だけ、くるくる金髪でブルーの目っていう子もいます。
そんな事があって家に帰ると、翌日の試験の為息子が教科書を開いてテーブルに置きっぱなしにしてありました。
教科書を開いておけば頭に入るとでも思ってんのかしら?とため息つきながら教科書を覗いてみると、どんぴしゃり、遺伝子の項でした。
ついつい読み進めてしまいました。
ってことは永遠続く遺伝子が主役で、この体は遺伝子の為の乗り捨て馬車みたいなもんなのか。
昔、旅行する時に次から次から馬を乗り換えて先へ進んだように。
ついでに子供の時の『あたしは誰?』』も思い出し、遺伝子がこの体に不満があってあんなどつぼを作ったんかしら、と思い当たったわけです。