キフキフパリとしましては大変光栄な事に、備前焼きの展覧会をパリで開催するお手伝いをさせていただきました。
それも備前は備前でも、人間国宝を2人も出した由緒正しき藤原備前です。
お爺様、お父様が人間国宝というとんでもないポジションに立っていらっしゃる藤原和さんのパリ展覧会です。
奥様のいくこさんとのお2人の見事なチームワークで何事も上手くいきました。
フランスの焼き物専門家や、セーヴル美術館、東洋文化専門のセルヌスキー美術館などからも色々興味深いラブコールがありました。
お恥ずかしい事に、私は始めてしげしげと備前焼を見せて頂きました。
どっしり、丈夫で健康そうな見かけなのにそりゃ、デリケートなんだそうです。
釜に入れりゃ焼けるってもんでなく、割れてしまう事が多いそうです。
ポンと花なり木の枝を放り込んでも様になる、一番安い魚を1匹買ってきてペロンと置いても様になる、不思議な魅力があります。
とても寛容なんです。
来たもの拒まず、それどころか、その物の良さを引き出してあげる役を果たしています。
感心しながら眺めていて、どっかでこんなのと会ったことあるな?何処だ?何だ?と頭の中をかき回しながら数日過ごしていました。
最終日、藤原ご夫妻の空港へ向かう車を見送って、家へ帰る為歩いていて思い出しました。
チェロだ!
あっちもこっちも緩んでいる今でこそ、テレヴィで犬を見ただけで涙が出てきますが、20代の頃なんて何処もかしこも突っ張っていたのでそうそう涙なんて出るものじゃありません。
それが初めて音楽を聴いて涙が出てきたんです。
それはバッハのチェロ無伴奏でした。
それから毎日1日中聞いていて、ハテ、私はバッハが好きなの?チェロが好きなの?と思い、色々なバッハ、色々なチェロを聴いてみました。
私の心臓を掴んだのはチェロでした。
チェロは人間の声に一番近い音なので安心感がある音なんだそうです。
頼りになって、信頼できて、包容力があって、控えめだけど要所、引き締め所になっていて。
ソロでも充分聞き応えがある、独立心も旺盛です。
備前もそれだけ置いておいても大きい存在です。
なんか備前とチェロって似てるわ。
地下鉄乗るのも忘れて、そんなことを考えながらイヤー面白い!なんてニヤニヤしながらバッハのチェロ無伴奏を頭の中で弾きながら歩いていたら家に着いてしまいました。
とても気さくな藤原ご夫妻。
日本でだったらこんなに気軽に話しかけたりできないお方なのだろうな。