先日、パリのシャンゼリゼ劇場で指揮を振っていたクルト マズアがチャイコフスキーの悲壮の真っ最中に指揮台から客席まで落っこっちました。
通常、特に高齢の指揮者の場合ちゃんと指揮台にバーが付いていて、後ろにでんぐりかえらないようになっているんですが。
なんでも、クルト マズアはその時、第一ヴァイオリンに近づいて行って横から滑り落ちたそうです。第一ヴァイオリンはすかさず支えようとしたのですが間に合いませんでした。
彼は84歳ですよ、ましてやパーキンソン病です。一列目の客席に倒れこんだクルト マズアは意識もあり、これと言って痛い所もなかったそうですが、彼は巨体です。起き上がれず、もちろんコンサートは中止。すごい事に検査の結果何処も壊れてなかったそうですが今も病院で大事を取っています。
クルト マズアは旧東ドイツ出身で、壁が崩壊するに至った民主化デモの際、当局に市民への武器行使を避けるよう要請スピーチを街角に配置してあるスピーカーから流したという平和主義者として有名です。
それから、3番目の奥さんが日本人で、お2人の息子ケン マズアも指揮者として活躍しているという、日本人には身近な指揮者です。
この人昔から強い人です。居眠り運転して1番目か2番目の奥さんや同乗していた人達が亡くなったのに本人は元気。
84歳の今でもオーケストラの指揮を振れる。
指揮者とは1回のコンサートで2万回位腕を振って、常に軽いムチ打ち状態になるほどの運動量だそうです。誰だったか、爪楊枝で最低限の動きで指揮する指揮者もいますけど。今回もあんな所から転げ落ちても平気だなんて。
しかしながら指揮台から落ちるという事故は結構あるようです。前の方の客席に座っていると佐渡裕さんなんかもいつ落ちるのかひやひやします。
想像以上にオペラの歌手も事故にあいます。数年前、ロンドンでセビリアの理髪師で歌っていた歌手は滑って転んで足に怪我をしたんですが、その後車椅子で出演し続けていました。
それとか、何とかって歌手は足を踏み間違えて第一チェロに倒れこんだり、この場合チェロを一番に心配します。とてつもなく迷惑な話です。
シャンゼリゼ劇場はパリの数ある劇場の中でも美しい劇場です。ロケーションもこれぞパリ!と高級で美しいです。
パリの夜、クラッシックは眠いと言う方でも、見る為に行ってみるのも豊かな気持ちになります。