連載パリの眼科の巻その1

初めての目医者の待合室で待っていると、廊下の向こうからすっごい通る美声で名前を呼ばれました。まるで空港のフライトのアナウンスみたいなしゃべり方。姿は見えません。オー素敵な女医さんだわ、と呼ばれた方へいそいそと行きました。ドアの前に立っていたのは、背の高い小人みたいな人、頭はわら色の綿アメの様です。ハリー ポッターの映画にこんなのが出てきたような。『こんにちわマダム』とアシスタントのこの人に挨拶しました。お医者さんには『こんにちわドクター』と挨拶をしなければなりませんがね。椅子に座っていても立っていてもほとんど変わらないそのアシスタントは椅子に座り、指一本で一文字づつなにやらコンピューターに打ち込み始めました。眼科の診察室はとても暗いので、先生は何処に居るんだろうと見渡したんですが良く見えません。ハイ、では検査しますからそっちに座って。へッ?この人ドクター? 軽いショックを受けながら視力検査が始まりました。左右の視力が全然違うじゃないですか!目の奥の検査をしなければなりませんよ。なんだか怒られたような感じです。眼鏡とコンタクト用の処方箋を書いてもらい、アッ老眼鏡も必要です、と付け足すと。 ったー、もっと早く言ってくださいよ、もーぅ。あーた何歳? 答えると、なら大体こんぐらいよと手書きで処方箋を書いてくれました。帰り際、目の奥の検査の為の予約を取り、その足で眼鏡屋へ寄り早速眼鏡を2つ作りました。
数日後、期待に胸を大いに膨らませ新しい眼鏡を取りに行きました。変!見えない!大騒ぎをして3人のスタッフがてんやわんやしたんですが、結局慣れの問題という事になりました。
いくら経ってもちっとも慣れないその眼鏡をして、予約の日、目の奥検査に行き、この眼鏡変!見えない!と訴えると、例のハーリー ポッターに出てきたようなドクターは、そー、ならば全部最初からやり直せって事ですね、とにかくあなたが真面目に視力検査に取り組んでもらわなければ、私はそれを記すばかりなんですから、今回はきちんと集中してくださいよ。はい、瞬きしないでよーく見て!と検査が始まりました。そーかあたしがボーとしてたからいけなかったのかと小心に反省した私は緊張して息まで止めて集中しました。ケッ、何も見えない、まぐれ当たりも出来ないぐらい、白紙のようです。見えません!勇気を出して答えました。じゃあこれは?不安になるほど見えません。次のは?何か黒い線があるみたいだけど。。。。ドクター怒鳴り始めました。
『アー私は後悔しているわ、今日は来なきゃ良かった、本当に私は後悔してるわ』言いながら向こうへ行ってしまいました。
と、ここまで書いてもう目がジンジンしてきましたので次回をお楽しみに。
つづく