ヴェロニックOOOOさんの悪夢

もう何もかも見えなくなりました。
近くも中間も遠くも。
こうなると頭の中はボワーンとしてさらに抜けた感じになってしまいます。
どおしてか、私は見えないと聞こえないんです。
ですのでコンサートではフルオーケストラだろうと何だろうと、一番前の席、指揮者の靴の裏が見えるような席をいつも希望します。もう埃とか汗を浴びながら音楽やダンスを鑑賞します。
これはあまりにも不便なもんで目医者に行ってみました。
私の本当の目医者はすっごく気取っていて、待合室もどこぞのクラブのように薄暗くしゃれた作りです。
目医者自体は坊主のくせにいつもスリムな黒のスーツでびっしりしている人です。
そして自分が指定したこの世で一番高いコンタクトレンズを買わなかったら、とても気を悪くします。
私は、シンガポールからネットで買ったこの世で一番安いコンタクトレンズを使用中だったので、顔向けできないと、行った事もない近所の総合クリニックの眼科部門に医者指定なしの予約を入れて行ってきました。
予約は通りかかった時したので、クリニックの受付で直接しました。
予約係りの兄さんは、前夜の不摂生丸出しのウサギの目であくびしながら、ポイと予約の紙をよこしました。
何しろ何も見えない私は、恐れ入りますとお礼を言って見えない紙をバックにしまい、言われた予約日と時間を頭に叩き込みました。
時間厳守で行きました。
受付で,あーたの名前はヴェロニックOOOOさん?見えない私は、よく聞こえないし誰に話しかけてるんだか分からず、ほーとしていました。
それにフランス人の名前言ってるし。
オーオーちょいとマダム!と強い声でまた同じ事言っています。
へーあたし?
結局、予約の名前が違う人になっていて、人の予約の紙を持ってたあたしが大馬鹿モンってことになりました。
予約係の人の後を付いて、あの人この人とバトンタッチされ続け、やっとその辺でぼーーーーーーーと座ってた人がウンと頷きました。
フランスのクリニックのシステムとして、あれはお医者さんの患者を呼ぶ係りの人だと思い、ホッと安心して待っていました。
やっぱりそのぼーーーーーーーとさんが呼びにきたので、ハイどうもと簡単に挨拶して診察室に付いて行きますと、お医者さんはいません。
ケッ!そのぼーーーーーとさんがあたしの目医者でした。
何しろ動作が遅い、検査をしてなにやら紙に書くのも足で書いてるのかと思うほど遅い。
質問が千ほどあるのに、話しかけたら全て忘れてしまうのではないかと恐れてぼーーーーーとさんがペンを置くまで待っていましたら、こっちが質問事項を忘れてしましました。
ぼーーーーーーとさんいわく、『あなたの右目、強度の乱視、あなた何して欲しい?』
『あたし、乱視持ってない』
『あなた、知らなかった?』
『私、初めて聞いた!』
『それはおかしい』
もうターザンの会話です。
その後、正気を取り戻した私は、機関銃のごとく質問と、希望を申し立てたら、すっかり混乱してしまったぼーーーーーーとさん。
『必要な乱視、あなた頭痛くなる、気持ちも悪くなる、だから少し乱視』と説明するぼーーーーとさん。
結局、乱視がほんの少し入っている度の眼がね用の処方箋を1枚貰って帰ってきました。
よーーく家に帰って見てみますと、遠視の度も違うし、これ一体誰の目の為の眼鏡なの?これも見知らぬヴェロニックOOOOさん用なのかしら?と思い丸めて捨てました。
何かの本に、年を取って視力が落ちればもうあまり余計な事を見なくて済む。と嬉しそうな様子で書いてありました。
そうかそろそろの私の人生、ぎっと見張って陣取ってないで、横に退いてていいよ!っていう事なのだろうか?と。
と、このように下書きで書いたはずが、アップされていて大層慌てて手直しをしました。お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ございません。
1度にぱー書いて、訂正してアップと言う事ができなくなりもたもたしています。