続このアパート

17年前、なんだか飽きたわ、という我がままな気持ちからアパート探しを始めました。
その飽きたアパートを買った時に100件ぐらい見て回ったので、今度は多少の経験と、ある程度の好みや条件を持てるようになっていました。
なにしろ初めてパリでアパートを買おうと思い、不動産やにアパート下さいと買いに行ったら、まぁまぁとにかく座って、とあれやこれや聞かれたけど、ちっとも答えられなくて、改めて考えをまとめて出直したほどロバでした。
旧建築のアパートがいいのか、新建築のアパートがいいのか?
どの辺りの地区が希望か?予算は?希望の部屋数は?
結局考えはまとまらず、あらゆる地区、新旧建築、色々見て回って、検討に検討を重ねて決めたアパートが数年ですっかり飽きてしまったんです。
しかし2度目のアパート探しは、探し方も緩やかで、歩いてるときにたまたま通りかかった不動産やの広告で見に行ったり、新聞広告で見に行ったりというインターネット以前の正式なアパート探しの方法でのんびり探していました。
それで新聞を真っ先に不動産ページへ。という勢いではなく、ページをめくっているついでに眺めていて、あらいいかしらん。と電話をして数日後一つのアパートを見に行ってみました。
場所は気に入ったけど、アパート自体はなんだかなぁーーー。
ともぞもぞ、もやもやしていたんですが、まぁ、中は追々工事して改装すりゃいいか、と、しょうがない、ろくでもないアパートだけど買ってあげようか。の態度で返事をし、銀行の手続きを始めました。
ほしたらどうでしょう、あんたらお金足りませんで。と銀行の人に笑われました。
売主は定年退職した公証人の夫と、同じく退職した学校の先生の妻が直売り。
不動産屋がいないので、仕方ない、売主に直接、赤っ恥の事情を説明しました。
何しろ17年前です、今より17歳若かったわけですから、若かったんです。
親と同年代のこのご夫婦はなんとその不足分を貸してくれたんです。
いくら余裕しゃくしゃくの方とは言え、神の心です。
お蔭様で、売買手続を、何しろ公証人ですから、彼のヴァンドーム広場近くのすました感じのオフィスでシャンパンと共に無事済ませることができました。
その後もこの恩人ご夫婦と一緒にレストランに行ったり、クラッシック音楽が好きという共通点で何年か繋がっていました。
どたばたと引っ越してきたこのアパートは7階建て。
100年以上前にこのアパートを建てた建築家の家族が今だに3フロアー近く所有していて、住んでもいます。
よって持ち主が少ないアパートで当時はそりゃ皆仲良しで、ここで生まれ育って、その子供もこのアパートに居るってな感じ、賃貸の人も殆どいなかったので、皆大切に住んでいたし。
それが主のような、この辺りの生き字引のようなお年寄りが次々亡くなり、がらりとメンバーチェンジをして、全くもって喧嘩の絶えない住人達になってしまいました。
一番の原因は昨日の下のクソババアです。
現在もレストランと裁判中です。前も裁判して負けたくせに、懲りません。
私の家はと申しますと、追々改装して、という夢は直ぐにぶち壊れ、入居時以来ペンキすら塗り替えておりません。
今では眩しい白だった壁が黄色い壁となりました。
扉も窓もがたがた、床もみしみし。あっちこっち破けてるみたいです。
一度でいいから最新の快適アパートに住んでみたいなと憧れるんですが、ここのところパリ市内の旧建築のアパートの値上がり率が尋常ではありません。
そろそろ気分転換に買い替えるかなぁ。