パリのイエス

平日は17時がスペインチームが帰ってくる時間です。
スペイン人にしては珍しくいつも早めに学校に帰ってきて、学校に迷惑が掛からないように外で時間まで待っています。
ただ一度だけ待てど暮らせど帰ってこない日がありました。
ディズニーランドへ行った日です。
その日は18時30分に帰ってくる予定でしたので、息子が学校へ迎えに行きました。
19時30になっても誰も帰ってきません。学校へ電話してももう誰もいないので寄宿舎の方に繋がっちゃって話はトンチンカン。
学校へ行って見ようかと立ち上がった矢先に、円満の微笑みを浮かべたイエスと怒鳴られる前に遅れた事情を説明しようとあせっている息子が帰ってきました。
ディズニーランドが楽しくてうっかり遅くなったそうです。
大きな袋を抱えているので、『お土産買ったの?』『シー。でも僕のはひとつも買ってない』と得意顔。『偉いねー、優しいねー』『僕はOOOOに5回も乗った』(名前忘れた)と再び得意顔。美術館へ行って帰って来た日とは大違いにご機嫌です。
お昼は学校がお弁当を用意します。イエスはいつも手ぶらで出て行くので、貰ったお弁当を誰かのバックに入れてもらっているようです。
いつもは皆一緒に食べるから問題ないのですが、ディズニーランドではグループに分かれて行動したそうです。イエスのお弁当を持ってくれた子とは違うグループ。
イエスのお弁当はいずこへ?
結局、心優しいグループの皆がお金を出し合ってくれて無事お昼を買う事ができたそうです。
イエス、図体は大人並です。欧米人独特の立体的な体で、肩幅が広く、靴なんてあたしが頭に被れるぐらい大きいな足です。我が子のぺらぺらした体と同じ物でできているとは思えません。それなのに頭はれっきとした子供です。
今フランスの男の子達は、皆パーカーを着ています。イエスも欲しくなりました。
フランスやスペインやイタリアもエゲレスも、きっと他のヨーロッパの国もそうだと思いますが、きちんとしたお家の男子たる者、生まれた時から死ぬまで、襟付きの洋服しか着ません。
Tシャツはよっぽど行儀知らずの服装です。
海辺で水着の上にワイシャツを羽織っているヨーロッパ男性はいっぱいいます。
うちの近所の厳格な学校は男子は襟なしの服、運動靴禁止というこの世の物とは思えない校則があります。
襟なしの服は着ないと言う事は着るのはワイシャツかポロシャツだけです。
イエスも綺麗にアイロンが掛かった全て襟付きスタイルです。
ちょっと寒い時用、かなり寒い時用など取り揃えて上に着るものを万端にイエスママはカバンに詰め込みました。
朝、素敵な赤いカーディガンを着て出て行ったイエス。
夕方PARISなんて大きく書いてある、モンマルトルの麓にぶら下がっているようなパーカーを着て帰って来ました。それも誇らしげに。
それ以来そればかり毎日着ています。
こうやってお母さんのスーツケース一杯の思いやりは砕け散るのです。