タンギイ現象

一昔前まではフランス、多分他のヨーロッパの国でも、高校を卒業したら親元から離れて暮らすのが真っ当な子供の成長過程でした。今では、フランス全体では10人に1人、パリとその近郊では2人に1人の25歳~30歳の若者が親元に暮らしているそうです。
決して親も子も同居を望んでいるわけではなく、経済的な理由で仕方なく、嫌や嫌やです。このような状況を日本ではパラサイトと言うのだと思いますが、フランスでは”タンギイ”と言います。2000年頃に話題になった映画で、30歳過ぎて仕事もしているのに親の家に住んでいるタンギイ君の物語の映画からきています。日本の私の周りを見てみると、親も子も按配よく、お互いいい具合に協力し合って平和に生活しているようですが、フランスでは両者共ストレス、イライラの共同生活のようです。一度家を出たものの、失業や離婚や病気などで出戻ってくる例も多いそうです。昔は、パリ市内でも、大学生になった子供に屋根裏部屋など安く借りてあげられたものですが、今はそんな棺桶のような部屋でも10万円位ぼったくられるのでは、親としては手も足も出なくなります。
我が家も人事ではなく、我が者顔に当然のごとく居座っています。
主婦とは、いかに上手に手抜きができるかが大切だと思います。私としましては、ご飯がきちんとあって、トイレ、バスルーム、台所などの水廻りが清潔である事だけに気をつけています。他の事はまぁまぁ適当に。。。。。洗濯が間に合わず、息子などはパンツか無くて水着を着て学校へ行く事もままあるようです。
今日は遅くなるという日は、朝も早よから夕食の用意をし暖めるだけで食べられるよう整えておきます。っうのに、よくすっぽかされるのです。食べない時は連絡する事!と厳命した後3日間ぐらいはSMSで、”食べません、ごめんなさい”。なんて連絡が入るのですが続きません。トサカにきながらも夕食を作る健気な母さん。先日、夕食の支度をしながらニュースを見ようとテレヴィを付けたら、お湯が沸いたか、お鍋が焦げたかで台所に慌てて戻り、一段落付いて、つけっぱなしのテレヴィを見ると、”ひゃ~、何?あれ?どうしたの?” テレヴィの中に、にやけた我が息子が見えます。公開番組の視聴者席の一番前に滅多にない派手なターコイズブルーのセーターを着込でご機嫌で座っています。暫く????と思いながらテレヴィを見続けていると、バタバタと玄関が開き、テレヴィの中と同じど派手なセーター姿の息子が帰ってきたではありませんか!”あれ?あそこ、あんた、あれ?ここ、あんた” そりゃもう、写真を撮られたら魂が抜けると信じている土人の思考回路で、テレヴィの子と本当の子を交互に指差してあわあわしました。”30分の時間差で放送してるんだよ” ”だろうよ、だろうよ。そのぐらい分かるわよ。メトロ乗る時に連絡してよ” と迂闊ぶりとテレヴィの中にいるのだから直ぐ家に帰ってこないと安心して、夕食の用意が出来ていなかったことにチッとなった気持ちを誤魔化しました。
自慢しますが、私は一人暮らしをしたことがありません。なので少しでも家に一人っきりでいると幸せ一杯になります。私も子供にパリ市内のアパートの1つや2つぐらい借りてあげられるぐらい甲斐性のある母さんにならねば、そうすりゃいつでも一人ゆったりと生活ができるってもんだわ。と思うのですが、そうなったら初の一人暮らし、寂しくなるのかしらと小さな雲もよぎります。