タコのヴァカンス

なんだかあっという間に9月になり新学期が始まりました。素敵に日に焼けてパリに戻ってきた友達達から報告の連絡が入ってきます。『ところで、あーたの息子何してたの?』と長々話しの最後のほうで思い出したように聞かれます。
ヴァカンス前に『今年のヴァカンスどーする?』と聞くと、『別に』とバカ丸出しの答え。『どっか行きたい?』『ニューヨークなら(一緒に)行ってもいいけど』『あーた、ニューヨークは少なくとも3週間、まあ4週間は居なきゃいけない所よ、この夏はそんなまとめてパリを離れられないわよ』『なら行かない』『ロンドンは?』一瞬そそられた様子をしたけれど、ロンドンなんてツーと電車で直ぐ行けるから友達と行ける。と考えたようで『行かない』。と、このような会話があり、私としてははっきり言ってホッとしたわけです。もうこの子のヴァカンスの事を考えなくていいんだ!
ヴァカンスが始まったんだかまだなんだかの、本当にもう授業無いの?と何度も念を押したような日に、さっさと彼は友達の山の別荘へ出かけていきました。
『テオの山小屋に一緒に行くから電車のチケット買って。』と生意気です。『あらそ、先ずはテオのご両親に確認及び挨拶をしてからね』何故かしぶしぶ電話場号を渡します。
テオのお母さん曰く、大人無しの、総勢11人の男の子、女の子達だけで行くそうです。携帯もネットも繋がらない所で、買い物も山の麓まで歩いて行かなければならないような、そりゃあ何もない良い所だそうです。あの子達を信じましょう!と言い合い電話を切りました。
すっかり忘れてた頃にひょっこり帰ってきた息子は超ご機嫌でした。
その後も、また他の友達の別荘に行ったり、スポーツクラブの合宿へ行ったりと、出たり入ったりバタバタしたヴァカンスを過ごしていました。
家に居る時は、何がどうしたのか、暇さえあればピアノを弾いていました。習った事ないし、楽譜だって読めないのに。
今の子はホトホト感心します。ネットで曲の指使いが出るんですね。それを覚えれば楽譜が読めなくても弾けるんですね。
明日は満月と夜のニュースで言うので、『ベートーヴェンの月光を明日の夜弾いてね』とリクエストすると、ちゃんと翌日の夜には月光を弾けるんです。面白いので、サティー弾いてとかあれ弾いてとか注文を出していました。
幼稚園の頃から、彼は強制的にコンサートへ連れて行かれていました。そんな小さなお子さんはダメですと言われても、この子は大丈夫です!と言い張り、コンサート中はいつでもつねれる準備をしていましたが、誠に良い子ですね、と褒められるぐらい、きちんと聞いていたものです。ヨーヨーマーにだって、君はかわいいね!と言われたつーのに。中学生ぐらいから断固と拒否して行かなくなり、学校の音楽の時間の縦笛を鼻で吹くような、音楽をすっかりバカにした人間になりました。
ピアノを聴きながら、8月がお誕生日の彼は、1つ大人になるヴァカンスの都度に、母の言う事が少しつづ分かってくるのかしら。と母親らしい優しい気持になりました。
しかし甘かった。登校日、彼の学年は初日は午後からの登校です。その時間ぎりぎりまで宿題のレポートをパソコンに打っています、もちろん終らず時間切れ。学生の必需品の手帳も買っていない。
なんの成長も進歩も無し!このタコが!