絡み合う男衆

日曜日の朝っぱら、上から横からウォーとかブーとか騒々しく聞こえてきました。
殆ど目くら状態でサロンへよろーと行ってみると、息子がうろうろと立ったままじっとしてないでテレヴィを見ています。
あーラクビーの決勝戦なんだ。
横から聞こえていた歓声はこの子、上の階に住んでいる人たちも熱くなって観戦しているようです。
新聞のスポーツ欄はすっ飛ばすようなあたしがラクビーの混沌を理解できるわけがなく、わからない事だらけです。
トラック運転手組合から来たような男衆が人のお尻に頭突っ込んで、試合中の殆どの時間ダンゴになって絡み合っているのの何が楽しいのか?
その男衆のダンゴが解けると、必ずハンドバックを持った人が走ってきて、アイスノン当ててあげたり、大したことしていないのに、それまで辛そうな選手はけろりと立ち直って再び走り出す。
昔は薬缶でしたよね、このおまじないは。
見ていていつも不思議なのは、どうしてあんなに引っ張られててズボンが脱げないのか?
見ていていつも笑っちゃうのが、パンツを被っているようなあの帽子。
見ていていつもオーヴァーラップする光景は、ある日、友達の家に行った時のことです。
田舎なので鍵なんてありません。鍵の変わりにボクサーが2頭前庭をうろついています。
2頭がゴンゴン吠える声がピンポーン代わり。
私は顔パスなので吠えません、代わりに『撫で撫でしてー、撫で撫でしてー』と2頭にぐいぐい擦り寄られて、正しくラクビーマンよろしく、私としては押し倒されまいと必死のパッチで玄関までたどり着きます。
『誰かいるー?』と叫びながら勝手に入っていくと、裏庭からキエーという嬌声が聞こえます。
サロンを突っ切って裏庭へ出てみると、その家の主が血の滴る包丁を握って仁王立ちしています。
彼の見開いた目の先を辿ってみると、ギョエー!首なし鴨が庭を走り回っています。
ラクビーを見る度に、この切り落とされた鴨の頭をラクビーマンたちが放り投げあっていて、あっちの方で首が無くなったのも気づかない鴨が走り回っているというシーンが浮かぶんです。
しかし私のこの妄想はあながちトンチンカンではなく、人間の生首を投げ合って遊んでいたのがラクビーですよね。
それにしても、人間って頑丈でそうそう壊れるもんじゃないんだなとラクビーを見てて感心します。
結局フランスは8対7だったか9対8だったかの1点差でオールブラックに負けまして、フランスの監督なんて、すっかり不貞腐れちゃって、ろくにインターヴューにも答えませんでした。
その夜、誰かがコメントで、『まぁニュージーランドなんて所詮ラクビーぐらいしか無いような国だから勝って良かったじゃないの。』なんて芯から意地悪根性を剥き出して言っていました。