あ~、してやられたぁ~。

期間限定で特別公開なんていうのに滅法弱い私。それも”グランパレの地下700メートル初の一般公開!” 即予約しましたよ。
グランパレは1990年のパリ万博の為に建てられたエクスポ会場です。その万博が終わったら、当時の大スター建築家、デザイナーのコルビジェの、とっとと壊して ”20世紀のアート美術館” を造るというアイディアが認可されたのですが、コルビジェが亡くなって、計画も頓挫し、お陰をもって今現在も堂々とセーヌ川の横に立ちはだかっているグランパレ。
 
 
予約の日、職業柄時間より早めに着いたのですが、とってもフレンドリーな係りの可愛い子ちゃんに、こちらにお座りになってお待ちくださいね、と案内された木陰の椅子で本を読み始めたら、すっかり何しに此処に居るのか忘れて、あらあら、早く早くと可愛い子ちゃんに急き立てられました。
15人位のグループでいよいよグランパレの秘密の地下へ向かいます。案内の兄さんは、僕はアルピニストで、夏の間ここで井戸掘りのバイトをしています、とスペイン語圏の人らしく、ざ、じ、ず、ぜ、ぞ、が言えないフランス語が不自由らしい人。修復工事をしていて建設当時の地下700メートルの井戸を発見したとかぺらぺらぺらのお話をヴィデオなども見せながら説明。
エレヴェーターで地下に降りて行くにあたって、普段工事人の為のエレヴェーターなので、早い速度で降りて行くので、途中気持ちが悪くなるかも知れません。
下の方にはガスが発生してますが、体に影響はないガスです。しかし鼻の下にこれを塗っておいてください、とヴィックスのミントのポマードを皆に回します。
臭い匂いはかなわないわ、と大量にポマードを付けて白い髭の様になっている人を皆で笑ったりしながら、期待に鳩の様に胸を膨らませてエレヴェータに向かう一団。
エレヴェーターの入り口には、発掘していて見つかった、缶だとか皿だとかヨーグルトの瓶などが展示してあり、皆19世紀の終わりの品々にノスタルジックになりました。
四方真っ黒な正方形のエレヴェーターの真ん中にテーブルがあり、その上に何やら詩のような物が書いてある紙が数枚、建設当時の設計図など置いてあります。テーブルの周りに皆が立って、ガタガタゴトゴト、せこい遊園地の乗り物の様に揺れながらエレヴェーターは下降し始めました。途中、兄さんは紐を引っ張ってエレヴェーターの小窓を開けて下降している事を見せてくれました。
エレヴェーターが止まると、兄さんはテーブルの上の一枚の紙の ”このエレヴェーターに乗った我ら皆兄弟、一致団結” 的な文章を読み上げ、皆拍手。”はい、では上に上がります” ”へっ” ”降りないの” ”出られないの” ”?????”。の皆の問いかけに、”とても危険ですから出るなんて不可能です” キツネに抓まれた私達。そこに、兄さんの携帯が鳴り響きました。
 
 
 
 
眉間に目一杯の皺を寄せて対応している兄さん。”すみません、具合が悪くなった者がいるようなので彼をこのエレヴェーターに乗せてもいいでしょうか?”
皆大喜び!何と、真ん中にあるテーブルの上板を外すと奈落の底の様な地下が見えました。ヘルメットをかぶった3人の人が宙づりになって壁にへばり付いています。
”どーした?” ”気分が悪い、病気だ!” ”ご案内しているお客様が居るけど、このエレヴェーターに乗って来い、皆んさんOKだ” ”そうだそうだ、早く乗りなさ~い” と叫ぶ私ら。彼ら同士のこの会話はフィンランド語?見たいな聞いた事も無いような言葉にフランス語が混ざっています。それにしても妙に暑い、汗だらだら。のそのそしている3人。バカなのか1人が逆方向に降りて行きます。私ら唖然。”あの人何しているの????” そのバカはぐっと下まで下がって、何やら蓋を開けると、地獄の窯の様にゴーゴーと真っ赤な炎が燃え上がりました。”何やってんだっ、早く閉めろー” と大あせりで叫ぶ我らの案内人の兄さん。このあたりで、ゲラゲラ笑いが起こりました。全くもってしてやられました。
最初っから最後まで、完全なるお芝居。最後まで真剣眼で、大丈夫でしたか?と演技をし続ける兄さん。結局あの暑さから考えて、私達は2メートル位しか降りてないんではないかしら。
出口で、よくぞ無事に戻って来られましたね、ご苦労様でした、とお水なんか振る舞われました。最後のダメ押しが、ボランティアで井戸掘りを手伝ってくれる人を募っています。ご興味のある方はここに記入してください。結構な人が名前、電話番号、メールアドレスを記入していました。
スタッフ全員、役に徹して全く素晴らしいすっとぼけっぷり。
有料だけど、この大掛かりないたずらには誰も文句は言わないと思います。
それにしてもあの穴は本当だったのでしょうか?あの穴の底のゴーゴー怒ったような炎は何だったんでしょうか?