帰省中

疲れた体にアルコールをぐいっとあおって、ぐわ~っと寝て起きたらあら不思議ここは日本です。全くもって久しぶりの日本で、母に、”すっかり忘れられたと思っていた”と皮肉たっぷりに恨めしそうな顔で言われたほどです。”そうなのよすっかり忘れていたのよ”としゃあしゃあとかます親不孝者。
年なりにどの程度母の頭がふやけてきているか、こちらこそ、すっかり私の事を忘れているんじゃないかと心配して来てみたのですが、大丈夫の様です。
いくら久しぶりだろうが、全く違和感、懐かしい気持ちが湧かないなぁと電車に揺られていて思ったのですが、結局生まれてからフランスへ移民するまでの私が知っている日本となんら変わらない根っこがあるのだな。電車の車内にはこのように、このような広告を出すもの、街の看板はこのような色にするもの、本はこのように売るもの、などこうするものという根本のルールが変わっていないからなのだわと思う訳です。それは、いくら世界中どこの都会も同じブティック、レストランがあって、何ら変わらんとは言いつつ、それぞれの国なりの独特性があるという事は、独自の根本のルールというか思考というか好みというかが基盤にあるからなんでしょうね。その中でも日本はすば抜けた独特性を発揮しています。もし私が日本人でなく、他の国民だったらモンペ穿いて豆腐を買いに行くような強烈な日本ラヴになっていると思います。
寒いからこの部屋で寝なさいと、自分の部屋に私の寝具を用意して、さあさあもう寝るわよと22時に消灯されたはいいが、先ずちっとも寒くない。生暖かい感じなのにガンガン暖房付けた真っ暗な部屋で、お目目ぱっちりの私は、早々くうくう可愛らしく眠り始めた隣のベッドの母の存在を意識しながら、もう少し頻繁に会いにこようと誓いました。
それにしても、もう我慢でけん、暑いし、何がしかを読まずして眠ることなんかできません。そ~っと自分の部屋に引っ越し、窓を開けて丸く優しい空気を部屋に入れて、昔読んだ本を引き出してみれば、相当年分の埃でくしゃみが止まらなくなり、結局母に逃げ出したことがばれてしまいました。そんな寒い部屋で窓まで開けている大ばか者となり、早く温かいこっちの部屋に戻りなさいと怒られる始末。朝まで悶々の時間を過ごしました。
ニュース番組の切り口で、今日は寒かったですねを連発している日でも、小春日和のような緩い空気に感じる私は、よくパリで見かける冬でも半袖を着ている野蛮人のようにとうとうなってしまったのか?又は日本が南国になってしまったのか?
人間も空気も水も何もかも丸~るい日本にいて溶けちゃいそう。