ニッポンの独得 テレヴィ

久しぶりに帰国することの利点の一つに、皆がすっごく優しくしてくれること。もう売れっ子で忙しい毎日です。
なのであまりテレヴィの前に座ってぼやけている事はできません。が、それでもしみじみ思うに、日本人は世界一雑学に詳しい民族であろう、そして国民総出でグルメであろう、そしてそして国を挙げて健康オタクであろう、ということ。この3つのキーポイントで一日中テレヴィが騒いでいます。
おまけに同じ人がずっと出続けているというのは、いくらなんでもあり得ないので、私の錯覚だとは思いますが、そんな感じです。
テレヴィを見ていれば、世界中の面白話や不思議話や秘密話を聞くことができ、茶の間に寝そべったまま見聞を広げることができる国ニッポン。それなのに何故気心はいつまでもナショナルなんでしょうかね。ニッポン人魂は大切に守らなければなりません。ユネスコに登録したくなるような特殊なモノですから。しかしテレヴィで得た世界中の雑多な情報を元にインタ-ナショナルな思考回路も整備すれば恰好よくなるのになぁ。
何でも食べてやろう、という食に対する好奇心は他の国ではなかなか見られない傾向だと思います。
今フランスでも素人やその辺でレストランをやっている人が参加する料理人チャンピオン大会がテレヴィ番組として人気で、いくつもやっています。
まぁ、エゲレスなどのテレヴィ番組のパクリなのですが。それは、どんだけ料理が上手かというのが番組の趣旨です。とてもお母さんが家の狭い台所で、会社から18時に帰ってから作れるような料理ではありません。
その点、日本の番組は食べる人が主役。火を使わずこんなに簡単にできる夏バテ料理。とか、家でもできるギリシャのどこぞの島の坊さんが作る料理。とか、あそこに行ったら絶対食べなきゃいけないあれ。とか、すざましい情報収集力です。
私などもそんな日本からパリにいらしたお客様からパリのスイーツの最新情報を教えて頂くことがあります。食べることに関する情報量は日本は世界一だと思います。あっぱれです。
どこに行っても、ご当地グルメがあります。少しでも遠出したら、食べるものを買わなきゃ気が済まない日本人気質に答える為には最低でもご当地饅頭は用意されています。駅弁に対する愛も熱いものです。
日本人は相当なグルメです。
再び、日本人女性が平均寿命世界チャンピオンになりましたね。そりゃそうだろうよ。あんなに朝から体にいいこと、健康維持、事前病気チェックポイントなどの特集をやっているんですから。
朝の8時にテレヴィで、これがボケ防止に効果的なんて言えば、お昼にはもうどこのスーパーにもそのお勧め品は売り切れるような国ですから。皆真面目に健康に取り組んでいるわけです。何が嬉しくて、なるったけ長生きしたいと思っているのか不思議で、周りの人に聞いてみれば、長生きはしたくないと皆答えます。しかし、健康に短く生きるなんてそう上手く行くわけないんだから、一生真面目に健康に気を付けて細く長く生きることになっちゃうんじゃないのかしら。
最近の傾向だとは思うのですが、番組の始まりと終わりの区別がはっきりわからないです。
コマーシャルと番組の境目もよくわからないです。
番組自体の予告放送も長々やるので、番組が始まったんだかなんだかわからないです。
番組欄を新聞で見てみると1つのプログラムがおっそろしく長いのにも魂消ます。
どのバラエティー番組も醜い人ばかり取り揃えているのは、ギャラの関係なのかもしれませんが、いくらなんでも酷過ぎると思います。皆「目くそ鼻くそを笑う」状態です。この言葉自体、私は大好きなのですが、その状況を公共のテレヴィで見たくないです。他所の国の人には、かなり異様に映る光景です。
フランスのテレヴィとの違いは、日本のテレヴィは騒がしい、金魚鉢ぶちまけたような色の氾濫、言葉が分からなくても、楽しげな様子は楽しめる。フランスのテレヴィは言葉が分からなけりゃ、何が何だかさっぱりわからん!視覚用サーヴィス無し。
一昔前のフランスでは、テレヴィとは教養のない人が見る物というポジションでした。なので持ってるのがこっ恥ずかしいので、タンスに入れて隠したり、寝室にそっと置いておくものでした。さすがに今では居間に堂々と置いてあるテレヴィの姿を見かけますが、食事中にテレヴィをつけるのはご法度の家は多いです。
こうやってうるさく感想を述べながらテレヴィを見ていると、知っているバリバリだった俳優がボケ老人役になっていたり、フリフリだったアイドルがお母さん役になっていたりを発見して時の移りを大いに実感している次第です。