最近、バスや地下鉄がいつでもどこでも混んでいるんです。どうしたんでしょう?

その日もバスで家路に向うところでした。パリには2台のバスが繋がっている路線があるのですが、その場合一番後ろのドアから乗ると結構空いていて座れます。
普通の1台分のバスは前のドアからしか乗れません。後ろのドアからちゃっかり乗ると、”乗車は前から!”という注意のテープを運転手が流します。

バスや電車の席に座る時、素早く既に座っている人を観察します。浮浪者や怪しげな人、又はアメリカンサイズの人でないことを確認してからでないと、とんでもないことになりますので。しかし最近は浮浪者でも皆小奇麗にしてスマートフォンなんぞ片手に持っていたりするので、見分けが難しい所です。

で、2台分繋がった長いバスの後部ドアから乗り、ぽっかり空いていた席をいつもの習慣で隣に座る人を確認、30代の普通の地味な男性。OK,よっこらしょと座り、バスを待っている間に読んでいた本の続きを読み始めました。

パリの地下鉄やバスのシートってとても狭いのをご存じの方は多いと思います。なのでアメリカンサイズの人が隣だと、ぶるぶるする肉が体に触れて気持ち悪いの頂点です。この時普通にどこもお互い触れることがなく座っていられました。頭が本の中に入っていたので、周りに鈍感になっていたのですが、それでもお隣さんが、まぁ忙しなく動くこと動くこと。床に置いてあったバッグを膝の上に置いて、がさごそしたり、ポケットに手突っ込んでがさごそしたり、じっとしていなさい!と頭小突きたくなりながらも、本に集中。その内なんか熱い物を太ももに感じました。横目で見るとお隣さんの手です。それも軽くグーにした手の甲の方が私の太ももの横に置いてあるのです。この人の手は燃えているのか?とあまり気にせず、座り直すと手は引っ込み、又がさごそあっちこっちしています。再び本に戻ります。その内また熱いグーを太ももに感じました。はぁ?とさすがの私も怪しみ、体をぎりぎりまで押しつけ、お隣さんとの間に猫が座れるぐらいの隙間を開けました。このはっきりした境界線を越えてきたら決定的だなと知らん顔をしながらも待ち構えていましたら、来ました来ました、燃える手の甲側のグーをしっかり私の太ももに押しつけてきました。
グーを見て、そのまま視線をお隣さんの顔に上げると、手をさっと引っ込め、俯き加減の何とも悲痛な横顔。ここで私が意地悪な怖い言葉を投げかけたら、キーと頭を掻きむしって、窓ガラスに頭を打ち付けて走っているバスから飛び降りてしまうのでは、と心配になるような様子です。それでも、このまま黙っていられる自信もなく2駅手前でしたがバスを降りました。大通りを避けて、裏の静かな住宅街の道を歩いて帰りる心は暗く、どうしてあんなになっちゃったんだろうとグーさんの辛そうな横顔が離れませんでした。

最近は”痴漢を目撃したら、知らん顔をしないで注意をしましょう”という注意書きを見かけるので、フランスにもバスや地下鉄に痴漢がいることはいるんですね。
痴漢になるのもいろいろな事情ってもんがあるんでしょうが、あ~悲しい。

日本で幼気な少女だった私が通学時にしょっちゅうあっていた痴漢に対する感想と今とがこんなに違うという事が一番びっくりした発見でした。