行きたい、行きたいと願いながら果たせなかった”ディズマランド”。謎のアーティスト、バンクシーがプロドュースした史上最低のテーマパークです。エゲレスのちっこい海辺の町のビーチに5週間だけ設営した”悪夢、絶望、憂鬱の王国”。バンクシーらしいブラックユーモアの世界にとっぷり浸りに行きたかったのですが。残念無念鳩ポッポ。
撤収した木材や設備はフランスのカレーにある悪名高き移民キャンプ、別名”ジャングル”に送られ、シェルターを造るそうです。もちろんカレー市にも移民キャンプ関係者にも何の通達なしにです。

そもそもバンクシーとは、1978年ブリストン生まれの男性としか公表されていません。ご存知”イグジット スルー ザ ギフト ショップ”というバンクシー本人が撮った奇妙なドキュメンタリー映画で一躍有名になりました。
私も、それを見て一目惚れをした訳です。彼のユーモアがビビンと私の琴線に触れました。動物園のペンギンの囲の上に”僕達魚はもう飽き飽きだよ”なんていうのもゲラゲラです。
それ以外、彼が得意とする社会風刺もそうよそうよと膝を打ちます。

前出のカレー市とはドーヴァー海峡を挟んであっちがエゲレス、という立地です。日に日に増すアフガニスタン、アフリカ、シリアなどからの移民が命がけでヨーロッパ大陸に到着し、ドーヴァー海峡の向こうエゲレスを目指している人達が集まって今や約6500人の移民が非常に困難なキャンプ生活をしています。フランスにいるのだからそのまま移民登録をしてフランスに住めばいいのにと思うのですが。フランスは嫌や、意地悪だし、仕事なんかないし、どうしてもエゲレスに行きたい!という人達が隙を見ては国境を渡ろうとするので、事故は絶えません。フランス、エゲレス間の新幹線ユーロスターの運転士達はいつ轢いてしまうか恐くてしょうがない、こんな状況では勤務できないと訴えています。長距離トラックの運転手達も、荷台や屋根の上やトラックの下にへばりついている移民を追い払うのにかなりのストレスを抱えているそうです。

branksy先日その移民キャンプ”ジャングル”にバンクシーが出没して作品を描きました。

その1点がスティーヴ ジョブズの等身大です。『ジョブズもシリアからの移民の息子です。その彼が創った会社アップルは世界で最も利益を上げている会社です。それは移民をアメリカが受け入れたから為し得たことです』という事がバンクシーのメッセージです。カレー市長は、けしからん落書き!などと言わず、『作品は素晴らしいし、メッセージ性がある』と保護する事に決めました。そりゃそうですわ、今やバンクシーの作品は1億円は軽くしますからね。
パレスチナのガザ地区がイスラエル軍の空爆を受け、破壊された家々の瓦礫にバンクシーが作品を描きました。世界中にガザの現状に注目してもらう為です。
ある家の鉄のドアに描かれたバンクシーの作品をとんでもない悪魔の心の輩が2万円で持っていったそうです。全部を失って少しでもお金が欲しかった家主は、後からその価値を聞いて心臓が爆発するほど悔しがった事でしょう。他の作品は住民がフェンスを立てて保護しているそうです。

バンクシーの作品の、そして彼がする行動のユーモアさが私はとても好きです。ブラックの中にもフッと笑えるかわいらしさ、茶目っ気があるのが楽しい。