この子と言うのは、まぁうちの息子なんですがね。最近ちと変なんです。

夕食の席で、『おっつき様ってさ、いつもひょんな所に居て面白いよね』と話を振ると。
慈悲深い顔付きして、『それはね、月の自転と公転と、地球の自転と公転の速度の。。。。。。。。』とこの私に向かってとうとうと説明し始めるわけです。
今までなら、完全無視だったのに。”あたしゃそんなカラクリなんてどうでもいいの、いつも違う所にいる月のことを面白がっているだけなんだから。”とお腹の中で言いながら。『あーた学校の先生にでもなる積もりでいるの?』と聞くと、『別に、何で?』『別に』

映画から帰って来た彼に、『面白かった?』と礼儀上聞いてみますと。雲の上に居る顔つきで『何て言ったら良いかな~・ん~、何だろ~、自分に何が起こったのか解らない、ん~』これを何度も繰り返して、宙を向いていました。
今までなら、肩をすくめるのが答えだったのに。

土曜日、『今日は夕食が終ったら、ノートルダム寺院のコンサートのリハーサルへ行って来る。』『アッ?』『友達が出るから』『アッ?』
彼の通っている学校には、ノートルダム寺院の聖歌隊の子達が通っています。聖歌隊の子達は午前中だけ学校に来て、午後はお歌の練習です。息子は小学校の時いつも彼らと同じクラスでした。コンサートの招待状を貰ってもカバンの奥底でくしゃくしゃになっていただけなのに、なにを今更どーした?翌朝の本番コンサートにもきちんと出席。疑う母に、プログラムを見せる息子。

クラスで行った演劇鑑賞から帰ってきた夜。今までなら、アパート中が振動する勢いでドアを閉め、そりゃ荒々しく帰ってきたんです。礼儀上『どーだった?』と聞いてみますと。吊り上がった眉毛が印象的な、にきびがちらつくおでこに ”最悪!目が腐る!風呂でもゆっくり入っていた方がどんだけましか、俺の貴重な時間を返せ!”と電光掲示板で出ていました。
ところがその晩は、穏やかな顔つきで、『原作は良くなかったから、期待してなかったんだけどね、演出が良かったし、俳優達も悪く無かったよ。イヤーはっきり言って素晴らしかったね!』『アッ?』

勉強をしないで、呑気坊主を決め込んでいるのは相変らずです。兄弟がいない私は少年という者が解りません。この子誰?と謎は深まります。